車両・安全 公開
国交省が冬用タイヤ交換で注意喚起、大型車の車輪脱落事故は128件
左後輪・増し締め・管理表
国土交通省は2026年10月1日、令和7年度(2025年度)の大型車の車輪脱落事故が128件と、令和6年度の120件から8件増えたと発表し、冬用タイヤの交換時に確実な作業をするよう呼びかけた。関係団体と連携した「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」は2027年2月末までで、前日の9月30日には、国交省の3つの課長の連名で「令和8年度緊急対策」の通達が出ている。この記事では、別紙1 の内訳(月・タイヤの脱着からの期間・地域・作業者・不備)と、緊急対策が求めるタイヤ脱着作業管理表と日常点検、道路運送車両法の日常点検の条文を、大型車を使う事業者の立場から整理する。
この記事のポイント
- 大型車の車輪脱落事故は128件令和7年度(2025年度)の件数で、前年度の120件から8件増えた。人身事故は3件で、3名が軽傷を負った。
- 左後輪が約95%国交省の別紙1 によると、令和7年度の大型車の車輪脱落事故128件の約95%が左後輪からの脱落で、約56%は大型車の使用者によるタイヤ脱着作業の後の脱落だった。
- 管理表に沿って作業・記録9月30日の緊急対策は、貨物自動車運送事業者に、自社で大型車のタイヤ脱着作業を行う場合のタイヤ脱着作業管理表に沿った作業と記録などを追加して取り組むよう、周知・徹底するとしている。
マーカーを引いた文を節ごとに拾い読みするだけでも、要点が分かるように書いています。
国交省が10月1日に発表した車輪脱落事故防止キャンペーン
国土交通省(物流・自動車局自動車整備課)は2026年10月1日、「冬用タイヤ交換時には確実な作業の実施をお願いします!」と題する報道発表を出した。大型車の冬用タイヤへの交換時期に車輪の脱落事故が増加する傾向を踏まえ、関係団体と連携して「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」を実施し、タイヤ脱着時の確実な作業及び保守管理の徹底を呼びかけるとしている。
「令和7年度の大型車の車輪脱落事故発生件数は128件であり、令和6年度(120件)に比べ8件増加し、更なる対策が急務です。」国土交通省 報道発表(2026年10月1日)
報道発表は、多くの事故車両でタイヤ脱着作業時のさび取り清掃、各部位への潤滑剤の塗布及びホイール・ナットが円滑に回るかの点検等が不十分であることが確認され、保守管理でも増し締め及び日常点検時のホイール・ナット緩み確認等が確実に実施されていないことが確認されているとしている。これは、令和4年2月に設置された「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る調査・分析検討会」の調査・分析の結果である。令和7年度の発生状況について、報道発表は次の3点を挙げている。
- 約5割の事故が11月から1月の冬季3ヶ月間に発生
- 5割以上の事故がタイヤ脱着作業後1ヶ月以内に発生
- 9割以上の事故が左後輪にて発生
国土交通省は、令和7年度(2025年度)の大型車の車輪脱落事故が128件と前年度から8件増えたとして、2026年10月から2027年2月末までのキャンペーンで、タイヤ脱着時の確実な作業と保守管理の徹底を呼びかけている。キャンペーンの期間を、報道発表は「令和8年10月から令和9年2月にかけて」と書き、前日の9月30日に国交省が通知した「令和8年度緊急対策」(別添1)では、令和8年10月から令和9年2月末までの間がキャンペーンの実施期間である。主な取組として、報道発表は、運送事業者・タイヤショップ・整備事業者等へのチラシ・ポスター・SNS・各種研修等による周知、大型トラック運送事業者の経営者層への周知、車輪脱落予兆検知装置の普及促進の3つを挙げている。
- 2026.9.30国交省が「令和8年度緊急対策」の通達を出す貨物流通事業課長・安全政策課長・自動車整備課長の連名
- 2026.10.1国交省の報道発表キャンペーンは令和8年10月から
- 2026.10.8全日本トラック協会が都道府県のトラック協会に周知を依頼全ト協発第313号
- 2027.1.29車輪脱落予兆検知装置の補助の申請受付期限予算枠に達し次第終了
- 2027.2末キャンペーンの期間の終わり令和8年度緊急対策(別添1)
出典: 国土交通省 報道発表(2026年10月1日)・令和8年度緊急対策(令和8年9月30日)・別紙4、全日本トラック協会 全ト協発第313号(令和8年10月8日)。年表は編集部が作成
大型車の車輪脱落事故の件数の推移(平成28年度〜令和7年度)
報道発表の別紙1「車輪脱落事故発生状況」は、車輪の脱落(いわゆる脱輪)のうち、次の事故を数えている。件数は年度(4月から翌年3月)ごとに数えており、出典は「自動車事故報告規則に基づく報告及び自動車メーカーからの報告」である。
「車両総重量8トン以上の自動車又は乗車定員30人以上の自動車であって、車輪を取り付けるホイール・ボルトの折損又はホイール・ナットの脱落により車輪が自動車から脱落した事故」国土交通省「(別紙1)令和7年度大型車の車輪脱落事故発生状況」1ページの注記
大型車の車輪脱落事故の件数(年度別・過去10年)
出典: 国土交通省「(別紙1)令和7年度大型車の車輪脱落事故発生状況」1ページのグラフの値をもとに編集部が作成。令和元年度はグラフの表記で「H31/R1」。棒の長さは10年で最も多い令和5年度の142件に対する割合
別紙1 の大型車の車輪脱落事故の10年分の件数では、令和7年度の128件は平成28年度の56件の約2.3倍で、10年で最も多かった年度は令和5年度の142件だった(倍率は編集部の計算)。件数は平成28年度から令和2年度の131件まで毎年増え、その後は令和3年度123件、令和4年度140件、令和5年度142件、令和6年度120件と推移した。別紙1 によると、令和7年度は車輪脱落事故に伴う人身事故が3件発生し、3名が軽傷を負った。
年度別の件数と人身事故の件数(表)
| 年度 | 事故件数 | うち |
|---|---|---|
| 平成28年度 | 56件 | 3件 |
| 平成29年度 | 67件 | 2件 |
| 平成30年度 | 81件 | 3件 |
| 令和元年度 | 112件 | 4件 |
| 令和2年度 | 131件 | 表示なし |
| 令和3年度 | 123件 | 5件 |
| 令和4年度 | 140件 | 1件 |
| 令和5年度 | 142件 | 2件 |
| 令和6年度 | 120件 | 3件 |
| 令和7年度 | 128件 | 3件 |
出典: 国土交通省 別紙1 の1ページのグラフ(事故発生件数/うち、人身事故件数)。令和2年度の人身事故は、グラフに棒も数値も描かれていないため「表示なし」とした(0件かどうかはグラフからは分からない)
令和7年度の128件の内訳(月・脱着からの期間・地域)
別紙1 は、令和7年度の128件を、事故が起きた月、車輪の脱着作業から事故までの期間、地域の3つの区分でも示している。
月別の件数(令和7年度・128件)
出典: 国土交通省 別紙1 の1ページのグラフの値をもとに編集部が作成。青い棒は11月〜1月。棒の長さは最も多い12月の23件に対する割合
令和7年度の大型車の車輪脱落事故128件のうち64件は11月から1月に起き、69件は車輪の脱着作業から1か月以内に起きている。別紙1 はこの64件を「128件のうち、64件(50%)が11月~1月に発生し、冬季に集中」と説明しており、月別では12月の23件が最も多かった。期間の区分では、1か月以内(グラフの「~1ヶ月」)が69件(約54%)で、次の「~2ヶ月」の区分の21件と合わせると90件になる(編集部の計算)。
車輪の脱着作業から事故までの期間(令和7年度・128件)
出典: 国土交通省 別紙1 の2ページのグラフの値をもとに編集部が作成。区分の名前はグラフの表記のまま。棒の長さは「~1ヶ月」の69件に対する割合
時期の書き方は資料ごとに違う。報道発表は「約5割の事故が 11 月から1月の冬季3ヶ月間に発生」と書き、9月30日の緊急対策は、例年、車輪脱落事故は冬用タイヤへの交換から1~2ヶ月後の発生が多くを占めているとしている。別紙1 の期間のグラフの題は「車輪脱着作業から車輪脱落事故発生までの期間」で、冬用タイヤへの交換の作業に限った数え方とは書かれていない。
地域別の件数は、事故が起きた場所(発生場所)と、事故車両の使用の本拠の位置の2通りで示されている。地域の名前は別紙1 の表記のまま載せる。
| 地域 | 発生場所 | 使用の |
|---|---|---|
| 北海道 | 33件 | 32件 |
| 東北 | 25件 | 24件 |
| 北信 | 19件 | 17件 |
| 関東 | 13件 | 14件 |
| 中部 | 14件 | 13件 |
| 近畿 | 4件 | 5件 |
| 中国 | 11件 | 11件 |
| 四国 | 2件 | 3件 |
| 九州 | 7件 | 9件 |
| 沖縄 | 0件 | 0件 |
| 計 | 128件 | 128件 |
出典: 国土交通省 別紙1 の2ページのグラフ「事故発生場所別、使用の本拠の位置別発生件数(令和7年度)」の値
発生場所では北海道の33件が最も多く、東北25件、北信19件が続く。3つの地域の発生場所の件数の合計は77件で、128件の約6割(60.2%)にあたる(編集部の計算)。別紙1 は、このグラフに「降雪地域で多く発生」と書いている。
タイヤ脱着の作業者と締付力管理不備・増締未実施
別紙1 の3ページと4ページは、どの作業の後に、どの車輪が、誰の作業の後に外れたかを、割合で示している。
作業の内容別では、タイヤ交換等が85%、定期点検整備が9%、臨時整備が2%、不明が4%だった。脱落した車輪の位置は、左後輪が95%、右後輪が3%、右前輪が2%、左前輪が0%で、報道発表は同じ状況を「9割以上の事故が左後輪にて発生」と書いている。作業の実施者別では、大型車の使用者が56%、タイヤ専業店が27%、自動車整備事業者が13%、不明・その他が4%だった。

別紙1 は、タイヤ脱着作業の実施者ごとに、作業時の不備の件数も示している。下の表の「締付力」は締付力管理不備、「清掃・摩耗」は劣化・摩耗確認、清掃不備、「潤滑剤」は潤滑剤塗布不適切を指す。
| 作業者 | 締付力 | 清掃・ | 潤滑剤 |
|---|---|---|---|
| 大型車の 使用者 (72件) | 38件 | 28件 | 13件 |
| タイヤ 専業店 (34件) | 20件 | 13件 | 10件 |
| 整備 事業者 (17件) | 12件 | 3件 | 3件 |
出典: 国土交通省 別紙1 の4ページのグラフ「タイヤ脱着作業実施者別タイヤ脱着作業時における不備(令和7年度)」の値。1件の事故に複数の不備があるため、事故件数と不備の件数は一致しない(別紙1 の注記)
令和7年度の大型車の車輪脱落事故128件のうち約56%は大型車の使用者によるタイヤ脱着作業の後の脱落で、別紙1 によると、どの作業者でも締付力管理不備が最も多く確認された。大型車の使用者の72件では、締付力管理不備が38件確認された。別紙1 は、作業状況の映像の記録から分かったことも書いている。
「一部の整備事業者では作業状況を映像で記録していたため、より詳細な内容の調査ができ、それによると、締付力管理不備の12件中6件でタイヤ脱着時のホイール・ナット締め忘れが確認された。」国土交通省 別紙1 の4ページ
別紙1 は、いずれの作業実施者においても、潤滑剤塗布不適切が未だに多く確認されている状況だとしている。不備の内訳は、作業時と保守管理に分けて次のように示されている(1件の事故に複数の不備もある)。
| 区分 | 不備 | 割合 |
|---|---|---|
| 作業時 55% | 締付力管理不備 | 26% |
| 劣化・ | 15% | |
| 潤滑剤塗布不適切 | 9% | |
| その他 | 5% | |
| 保守管理 42% | 増締未実施 | 20% |
| 点検時確認不備 | 14% | |
| 増締力管理不備 | 5% | |
| 増締時期不適切 | 3% | |
| 不明 | 不明 | 3% |
出典: 国土交通省 別紙1 の4ページのグラフ「作業及び保守管理の不備」の割合(※ 1件の事故に複数の不備もあり)
別紙1 の5ページによると、令和7年度に発生した車輪脱落事故の車両128台のうち89台に対して、各部品の劣化・損傷状態やタイヤ脱着作業の実施状況を確認する事故車両調査が実施された。調査では、ホイール・ナットとワッシャのすき間に潤滑剤の塗布が見られずスムーズに回転しないものやワッシャが固着しているもの、ホイール・ボルトやナットに著しいさびやゴミ等の異物があるもの、ディスク・ホイールやハブ等に著しいさびがあるもの等、適切なタイヤ脱着作業が実施されていない車両が確認された。
令和8年度緊急対策(9月30日の通達)が求めること
国土交通省は、報道発表の前日の2026年9月30日、物流・自動車局の貨物流通事業課長・安全政策課長・自動車整備課長の連名で、「大型車の車輪脱落事故防止に係る令和8年度緊急対策の実施について」を全日本トラック協会の会長あてに通知した(各地方運輸局等にも通知)。添えられた「令和8年度緊急対策」(別添1)は、平成29年度に設置した「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る連絡会」がとりまとめたもので、国交省は平成30年度から事故防止のための緊急対策を策定して取り組んできた。
「例年、車輪脱落事故は冬用タイヤへの交換から1~2ヶ月後の発生が多くを占めており、積雪予報が発せられた直後に交換作業が集中し、作業ミスが発生しやすい状況にある。」国土交通省「大型車の車輪脱落事故防止「令和8年度緊急対策」」(令和8年9月30日)
緊急対策は、外注作業の場合に必要な工具等の全てを有していなかったことによるものを含め、不適切な脱着作業が行われていた事例が確認されているとして、通常の降雪時期を待たず早期に冬用タイヤに交換するなど、適切な作業を前提とした作業平準化を推進するとしている。運送事業者向けの別添2-1「貨物自動車運送事業者の皆様へ」は、取り組んでほしい事項を、事業主・会社代表者と整備管理者・補助者に分けて挙げている。下の表は、別添2-1 と別添1 の主な項目を、相手ごとに1文ずつ並べたもので、「お・と・さ・な・い」のポイントの周知、左側後輪や積雪地域を走行する大型車の重点的な点検、トルク・レンチの校正などの項目は載せていない。
| 事業主・ 会社 代表者 | 車輪脱落事故の |
|---|---|
| 先進安全自動車 | |
| 整備 管理者・ 補助者 | 作業時間に |
| 自社内で | |
| 点検・ | |
| 車載工具で | |
| 貨物自動車 運送事業者 (追加の 事項) | 整備管理者は、 |
| 整備管理者は、 | |
| 整備管理者は、 | |
| タイヤ店・ 整備工場 など | インパクトレンチで |
| 入庫する | |
| 事業場以外で | |
| 全日本 トラック 協会 | トルク・ |
出典: 国土交通省 令和8年度緊急対策(別添1)の4.、別添2-1「貨物自動車運送事業者の皆様へ」(全日本トラック協会 全ト協発第313号に所収)。表記は原文から一部整理。タイヤ店・整備工場などの行は、日本自動車整備振興会連合会・全国タイヤ商工協同組合連合会などの団体が傘下の会員に広報・啓発する事項
緊急対策は、自社でタイヤ脱着作業を行った貨物自動車による車輪脱落事故が多く発生していることから、自社で大型車のタイヤを脱着する場合に、整備管理者が作業者にタイヤ脱着作業管理表に沿って作業させ、その結果を記録させることなどを、貨物自動車運送事業者に追加して周知・徹底するとしている。整備管理者には、ホイール・ボルト、ナットが新品の状態から4年以上経過している車両を入念に確認することも求めている。国交省の地方運輸局等と運輸支局等の取組は、次のとおりである。
「各地方運輸局等及び各運輸支局等は、運送事業者に対して、4.(1)及び(2)の取り組み状況を別添2-1又は2-2により確認し、同事故防止対策の取り組みが不十分なときは、積極的な取り組みを実施するよう指導する。」国土交通省 令和8年度緊急対策(別添1)2.(2)④
このほか、国交省は連絡会の構成団体の協力を得て、年末年始の安全総点検に関係して「ホイール・ナットの緩みの総点検」を実施するよう各運送事業者へ要請するとしている。自家用の大型車の使用者に向けても、全国自家用自動車協会が、計画的なタイヤ脱着作業や、車載工具で増し締めを行った場合の帰庫時のトルク・レンチによる締め付けなどについて、広報・啓発を図るとされている。
日常点検は道路運送車両法第47条の2の義務
日常点検表で点検する「ディスク・ホイールの取付状態」は、道路運送車両法の日常点検の基準(自動車点検基準 別表第1)にも同じ項目がある。同法第47条の2は、自動車の使用者に日常点検を義務づけ、事業用の自動車などには運行の開始前の点検を求めている。
「自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。」道路運送車両法 第47条の2 第1項(e-Gov)
「次条第一項第一号及び第二号に掲げる自動車の使用者又はこれらの自動車を運行する者は、前項の規定にかかわらず、一日一回、その運行の開始前において、同項の規定による点検をしなければならない。」道路運送車両法 第47条の2 第2項(e-Gov)
「次条第一項第一号」は第48条第1項第1号の「自動車運送事業の用に供する自動車及び車両総重量八トン以上の自家用自動車その他の国土交通省令で定める自家用自動車」で、トラック運送事業の車と、車両総重量8トン以上の自家用自動車が含まれる。日常点検の技術上の基準は国土交通省令の自動車点検基準で、第48条第1項第1号・第2号の自動車には別表第1 が当てはまる。
「(※2)5 ディスク・ホイールの取付状態が不良でないこと。」自動車点検基準 別表第1(事業用自動車、自家用貨物自動車等の日常点検基準)タイヤの項(e-Gov)
別表第1 の注は、この(※2)の点検を「車両総重量8トン以上又は乗車定員30人以上の自動車に限る」としている。道路運送車両法第47条の2と自動車点検基準を当てはめると、車両総重量8トン以上のトラックは、事業用・自家用を問わず、運行の開始前に1日1回、ディスク・ホイールの取付状態を点検することになる〈推論〉。車両総重量8トン未満の事業用トラックは、日常点検は運行の開始前に1日1回必要だが、別表第1 のディスク・ホイールの取付状態の項目は対象に入らない〈推論〉。
一方で、タイヤ脱着作業管理表の作成や保存期間を定めた規定は、編集部が確認した範囲(道路運送車両法第47条の2・第48条と自動車点検基準)には無い。管理表は通達に付いた様式例で、内容に沿ったものであれば自社の様式を使ってもよいとされている(日常点検表も、ディスク・ホイールの取付状態の点検項目が細分化された内容が点検されるようになっていれば、自社の様式でよいとされている)。点検整備の罰則や整備命令の条文は、この記事には載せていない。
タイヤ脱着作業管理表と日常点検表の項目
緊急対策の通達には、様式例として「タイヤ脱着作業管理表」(別紙1)と「日常点検表」(別紙2)が付いている。管理表は、登録番号又は車番・作業実施者名・実施日と整備管理者の確認欄を設け、次の5つの区分ごとに作業の結果(実施✓・交換×)を書く様式である。
| 清掃の 実施 | ハブ面・ |
|---|---|
| 点検の 実施 | ディスク・ |
| 油脂類 塗布の 実施 | ねじ |
| 取付 | タイヤ |
| 保守 | タイヤ脱着後、 |
出典: 令和8年度緊急対策の別紙1(様式例)「タイヤ脱着作業管理表」(全日本トラック協会 全ト協発第313号に所収)。項目は原文から一部まとめた。様式には、ISO方式だけ・JIS方式だけが対象の項目を示す記号(○・※)がある
緊急対策の様式例のタイヤ脱着作業管理表は、タイヤの脱着後に50~100km走行してからの増し締めを記録する欄を設け、最後の締め付けはトルク・レンチで規定トルクで行うよう注記している。管理表の注記には、次のような決まりもある。
- 規定の締め付けトルク値は、車両の「タイヤ空気圧ラベル」の近くに表示されている
- 対角線順に2~3回に分けて締め付ける(最後の締め付けはトルク・レンチで規定トルクで締め付ける)
- 二硫化モリブデン入りのオイル等は使用しない。トレーラの車種によっては潤滑剤の塗布が不要な箇所もある
- この内容に沿ったものであれば、自社の様式を使用してもよい
日常点検表(別紙2)は、ディスク・ホイールの取付状態の点検を「ナット緩み・脱落」「ボルト付近さび汁」「ボルト突出不揃い、折損」の3つの欄に分けており、この点検は「車両総重量8トン以上又は乗車定員30人以上に該当する車両が対象」としている。緊急対策は、ホイール・ナットの緩みの点検について、点検ハンマによる確認手法や、ホイール・ナットへマーキングを施す、又は、ホイール・ナットの回転を指示するインジケーター類を装着し、それらのずれを確認する手法により、確実に実施するよう求めている。緊急対策の注記によると、マーキング(合いマーク)の施工の決まりは次のとおりである。
- 対象となるナットが緩んでいないことを確認し、施工する
- ボルト、ナットに連続して記入する(できれば座金、ホイール面まで連続して記入することが望ましい)
- 増し締め実施後に施工する。タイヤ脱着時に施工したときは、増し締め実施後に再度施工する
- 確認しやすい色(白色、黄色等)を使い、ずれが目視で判別できる適当な太さで施工する
- 塗料は、屋外使用に適し、雨や紫外線等に対して耐久性のあるものを使う(例:油性顔料インキ)
ISO方式のホイールでは、「ホイール・ナットの緩み」の点検を、マーキングかインジケーター類による合いマークのずれの確認で行っても差し支えないとされている。
ホイールの締め付け方式(JIS方式・ISO方式・新ISO方式)
報道発表の別紙2 は大型車の車輪脱落事故防止のための啓発チラシで、2ページ目に「ホイール脱着作業の3つのポイント」とホイールの締め付け方式の表を載せている。3つのポイントは、ホイールボルト・ナットなどを清掃・交換する、ホイールボルト・ナットなどに潤滑剤を塗布する(ナットの座面には塗布しない)、必ず規定の締付トルクで締め付ける、である。
「ホイールの締め付け方式には、球面座で締め付けるJIS方式と、平面座で締め付けるISO方式があります。」国土交通省「(別紙2)大型車の車輪脱落事故防止のための啓発チラシ」2ページ
別紙2 のチラシによると、「排出ガス規制・ポスト新長期規制適合」の大型車からは、左右の車輪とも右ねじとする新・ISO方式が採用されている。従来のISO方式は、右輪が右ねじ、左輪が左ねじである。表の行は、別紙2 の表を、ねじの方向とナット・ソケットに分けて載せた。
| 項目 | ISO方式(8穴、10穴) |
|---|---|
| ホイール サイズと ボルト本数 (PCD) | 19.5インチ:8本 22.5インチ:10本 |
| ボルト サイズ | M22 |
| 新ISO 方式の ねじ | 左右輪:右ねじ |
| 従来ISO 方式の ねじ | 右輪:右ねじ 左輪:左ねじ |
| ホイール ナット | 平面座 |
| 使用 ソケット | 33mm |
| ダブル タイヤ | 1つのナットで |
| ホイールの センタリング | ハブインロー |
| アルミ ホイール 履き替え | ボルト交換 |
出典: 国土交通省「(別紙2)大型車の車輪脱落事故防止のための啓発チラシ」2ページの表(画像の PDF の文字を読み取り、画像と照合)。別紙2 の表の「ボルトサイズ ねじの方向」「ホイールナット 使用ソケット」の行を分けて載せた。別紙2 の表は ISO 方式の列だけで、JIS 方式の列は無い
チラシは、アルミホイール・スチールホイールの取り扱いミスによる車輪脱落事故も発生しているとして、組み換え時の誤組み付けや部品の誤組みに注意するよう呼びかけている。左後輪に事故が多い理由は、報道発表・別紙1・令和8年度緊急対策・別紙2 には書かれていない(編集部が確認した範囲)。新ISO方式と左後輪の事故の関係についても、これらの資料は触れていない。
車輪脱落予兆検知装置の補助金(上限5万円)
報道発表の主な取組の3つ目は、車輪脱落予兆検知装置の普及促進である。別紙4 によると、装置は、車輪に取り付けたセンサーがナットの緩みを検知し、中継器が運転席の受信機へ電波を送信し、受信機が光と音で異常を警報する仕組みで、別紙4 は「※機能には限界があります。日常点検整備も併せて必ず励行ください。」と注記している。「車輪脱落予兆検知システム」(いすゞ・UDトラックス)の説明は、フォワード・コンドルの記事にまとめている。
| 補助対象 車両 | 車両総重量8トン以上の 乗車定員30人以上の |
|---|---|
| 補助上限 | 50,000円 |
| 補助対象 装置 | 国土交通大臣が |
| 補助申請 受付期間 | 2026年6月30日(火)〜 予算枠に達し次第終了 |
出典: 国土交通省「(別紙4)「車輪脱落予兆検知装置」導入のご案内」2ページの「車輪脱落予兆検知装置補助金制度」(画像の PDF の文字を読み取り、画像と照合)
別紙4 によると、車両総重量8トン以上のトラックなどへの車輪脱落予兆検知装置の導入時の費用の一部を支援する補助は上限5万円(後付け装置を含む)で、申請の受付は2027年1月29日まで(予算枠に達し次第終了)である。補助は、国交省の「令和8年先進安全自動車(ASV)の導入に対する支援」の一環とされ、別紙4 は「一定の条件を満たせば、車輪脱落予兆検知装置費用の半減(※最大)が見込まれます。」と書いている。装置は車種・軸構成により適合が異なるため、導入を検討する場合は大型車メーカー4社の販売店にまず問い合わせるよう案内しており、装置の価格は別紙4 に載っていない。
冬用タイヤの交換の前後に立場ごとに確かめること
ここまでの資料と条文の主な事項を、大型車を使う事業者の立場ごとに整理する。条文の当てはめは編集部の整理で、個別の車が対象かどうかは、運輸支局等で確かめる必要がある〈推論〉。
| 貨物自動車 運送事業者 | 自社内で |
|---|---|
| 点検実施者に | |
| 運輸支局等は、 | |
| 自家用の 8トン以上 (ダンプ など) | 車両総重量8トン |
| 全国 | |
| タイヤ店・ 整備工場に 頼む使用者 | タイヤ店・ |
| 増し | |
| 運転者 | 運行前に、 |
| 増し | |
| 車載工具で |
出典: 国土交通省 令和8年度緊急対策(別添1)・別添2-1・別紙1・別紙2、道路運送車両法 第47条の2・第48条、自動車点検基準 別表第1。表記は原文から一部整理
自社でタイヤを脱着する運送事業者にとって、管理表による作業の記録と、脱着後50~100km走行後の増し締めの記録は、運輸支局等が別添2-1 などで取り組み状況を確かめるときの材料になる〈推論〉。緊急対策は、トルク・レンチは定期的な校正が必要であることについて、工具を販売する団体から購入者へ説明するよう周知するとしており、別添2-1 も、トルク・レンチは校正が必要だとしている。
編集部の見方
事故は冬と、使用者による脱着の後に集まっている
01
管理表の欄は多い不備に対応している
別紙1 によると、大型車の使用者によるタイヤ脱着作業の後に起きた72件では、締付力管理不備が38件確認された。不備の内訳でも、作業時は締付力管理不備(26%)、保守管理は増締未実施(20%)が最も多い。
管理表が求める「最後の締め付けはトルク・レンチで規定トルク」と「50~100km走行後の増し締め」の記録は、別紙1 で多かった締付力管理不備と増締未実施の2つの不備に対応している〈推論〉。記録の欄があることで、作業を誰がいつ行ったかを後から確かめられる形になっている〈推論〉。
02
交換の時期を前倒しする理由
令和7年度の大型車の車輪脱落事故は、発生場所で数えると北海道・東北・北信の3地域で77件あり、別紙1 は「降雪地域で多く発生」と書いている。緊急対策は、積雪予報が発せられた直後に交換作業が集中し、作業ミスが発生しやすい状況にあるとしている。
緊急対策が通常の降雪時期を待たず早期に交換するよう求めているのは、作業時間に余裕を持って正しい脱着作業を行えるようにするためで、降雪地を運行する車両を持つ事業者ほど、交換の計画を早めに立てる必要がある〈推論〉。緊急対策は、外注作業で必要な工具等の全てを有していなかった事例にも触れており、整備・タイヤなどの団体が、事業場以外で行う脱着作業でも必要な工具等を持参・使用するよう傘下の会員に広報・啓発するとしている。
03
左後輪の理由は資料に書かれていない
令和7年度の事故の約95%は左後輪からの脱落だった。左後輪に多い理由は、報道発表・別紙1・令和8年度緊急対策・別紙2 には書かれていない(編集部が確認した範囲)。
緊急対策は理由を示さずに、車輪脱落事故の多い左側後輪を重点的に点検するよう求めており、「お・と・さ・な・い」のポイントも、運行前に特に脱落が多い左後輪を中心に、ボルト、ナットを目で見て手で触るなどして点検するとしている。理由についての国交省の説明が出た場合は、この記事を更新する。
出典: 国土交通省 報道発表(2026年10月1日)・別紙1〜4、令和8年度緊急対策(令和8年9月30日)・別添2-1・別紙1・別紙2。〈推論〉は編集部の整理で、国交省の資料の記述ではない
まとめ
- 国土交通省は2026年10月1日、令和7年度の大型車の車輪脱落事故が128件(前年度は120件)だったとして、冬用タイヤの交換時の確実な作業を呼びかけた。キャンペーンの期間は2027年2月末までである。
- 別紙1 によると、令和7年度の大型車の車輪脱落事故128件のうち64件は11月から1月に、69件は車輪の脱着作業から1か月以内に起き、約95%が左後輪からの脱落だった。
- 大型車の車輪脱落事故128件を作業者別に見ると、大型車の使用者によるタイヤ脱着作業の後の脱落が約56%で、どの作業者でも締付力管理不備が最も多く確認された。
- 9月30日の令和8年度緊急対策は、貨物自動車運送事業者に、自社で大型車のタイヤ脱着作業を行う場合のタイヤ脱着作業管理表による作業と記録と、日常点検表による「ディスク・ホイールの取付状態」の点検などを追加して取り組むよう、周知・徹底するとしている。
- 道路運送車両法第47条の2と自動車点検基準を当てはめると、車両総重量8トン以上のトラックは、運行の開始前に1日1回、ディスク・ホイールの取付状態を点検することになる〈推論〉。
よくある質問
大型車の脱輪事故(車輪脱落事故)は何件?原因は?
国土交通省によると、令和7年度(2025年度)の大型車の車輪脱落事故は128件で、令和6年度の120件から8件増えました。対象は、車両総重量8トン以上か乗車定員30人以上の自動車で、ホイール・ボルトの折損かホイール・ナットの脱落により車輪が外れた事故です。原因について報道発表は、多くの事故車両でタイヤ脱着作業時のさび取り清掃、各部位への潤滑剤の塗布、ホイール・ナットが円滑に回るかの点検等が不十分で、増し締めや日常点検時のホイール・ナット緩み確認等も確実に実施されていなかったことが、令和4年2月に設置された「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る調査・分析検討会」の調査・分析で確認されたとしています。
トラックの脱輪はなぜ左後輪に多い?
別紙1 では、令和7年度の大型車の車輪脱落事故128件の約95%が左後輪からの脱落でした。左後輪に多い理由は、報道発表・別紙1・令和8年度緊急対策・別紙2 のチラシには書かれていません(編集部が確認した範囲)。運送事業者向けの別添2-1 は、整備管理者・補助者に「車輪脱落事故の多い左側後輪について重点的に点検してください。」と呼びかけ、積雪地域や舗装されていない道路を走行する大型車は入念に点検するよう求めています。
トラックの増し締めは何キロ走ったら?
緊急対策に付いた様式例の「タイヤ脱着作業管理表」には、タイヤ脱着後、50~100km走行後に増し締めを実施する欄があります。増し締めをやむを得ず車載工具で行った場合は、必ず帰庫時にトルク・レンチを使用して規定のトルクで締め付けるよう、緊急対策は整備管理者に求めています。規定の締め付けトルク値は、車両の「タイヤ空気圧ラベル」の近くに表示されていると、管理表の注記にあります。
ホイールナットの緩みはどう確認する?
緊急対策は、貨物自動車運送事業者の整備管理者が日常点検の実施者に日常点検表を使わせ、ホイール・ナットの緩み及び脱落、ホイール・ボルト付近のさび汁痕跡、突出しているホイール・ボルトの不揃い、ホイール・ボルトの折損等の異状を点検させるとしています。緩みの点検は、点検ハンマによる確認手法や、ホイール・ナットへのマーキング(合いマーク)、又はホイール・ナットの回転を指示するインジケーター類を装着し、それらのずれを確認する手法により、確実に実施するとされています。ISO方式のホイールでは、マーキングやインジケーター類による合いマークのずれの確認で「ホイール・ナットの緩み」の点検を行っても差し支えないとされています(注2)。マーキングは増し締めの後に、ボルトとナットに連続して記入するよう注記されています。
タイヤ脱着作業管理表は義務ですか?
管理表は、9月30日の緊急対策の通達に付いた様式例(別紙1)で、自社で大型車のタイヤを脱着する場合に、整備管理者が作業者に管理表に沿って作業させ、その結果を記録させることを、貨物自動車運送事業者に周知・徹底するとされているものです。管理表の注には、この内容に沿ったものであれば自社の様式を使用してもよいとあります。日常点検そのものは道路運送車両法第47条の2で自動車の使用者に義務づけられていますが、管理表の作成や保存期間を定めた規定は、編集部が確認した範囲(同法第47条の2・第48条と自動車点検基準)にはありません。
車輪脱落予兆検知装置の補助金はいくら?
国交省の別紙4 によると、「令和8年先進安全自動車(ASV)の導入に対する支援」の一環として、車両総重量8トン以上のトラックと乗車定員30人以上のバスを対象に、国土交通大臣が選定した装置の導入時の費用の一部を、上限50,000円(後付け装置を含む)で支援しています。別紙4 は、一定の条件を満たせば、車輪脱落予兆検知装置費用の半減(※最大)が見込まれるとしています。申請の受付期間は2026年6月30日から2027年1月29日までで、予算枠に達し次第終了となります。装置は車種・軸構成により適合が異なるため、別紙4 は大型車メーカー4社の販売店にまず問い合わせるよう案内しています。
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関連するニュース
出典と参考資料
- 国土交通省 報道発表「冬用タイヤ交換時には確実な作業の実施をお願いします!」(2026年10月1日) https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha09_hh_000365.html
- 国土交通省 報道発表資料(2026年10月1日・PDF) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002024584.pdf
- 国土交通省「(別紙1)令和7年度大型車の車輪脱落事故発生状況」(PDF) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002024585.pdf
- 国土交通省「(別紙2)大型車の車輪脱落事故防止のための啓発チラシ」(PDF) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002024586.pdf
- 国土交通省「(別紙3)ホイールボルト、ナットやディスクホイール、ハブの錆に注意!啓発チラシ」(PDF) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002024587.pdf
- 国土交通省「(別紙4)「車輪脱落予兆検知装置」導入のご案内」(PDF) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002024588.pdf
- 国土交通省「大型車の車輪脱落事故防止「令和8年度緊急対策」」(令和8年9月30日・別添1・PDF) https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/images/kinkyu_taisaku.pdf
- 全日本トラック協会「大型車の車輪脱落事故防止に係る令和8年度緊急対策の実施について」(全ト協発第313号・令和8年10月8日。国土交通省の通達(令和8年9月30日)と別添2-1・別紙1「タイヤ脱着作業管理表」・別紙2「日常点検表」を含む・PDF) https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2026/10/r08kinkyu.pdf
- e-Gov 法令検索「道路運送車両法」(第47条の2・第48条) https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- e-Gov 法令検索「自動車点検基準」(第1条・別表第1) https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800070
アイキャッチの画像: AIで生成したイメージです(実在の車両・現場の写真ではありません)


